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調律師の学校がオープン、その目指す姿とは?
西部ピアノ「特選コラム」~雑誌カンパネラ記事より~
ピアノの世界を身近に楽しむためのあれこれをご紹介する新企画の第1回目。現場で及第点がとれる調律師をきちんと養成させたいとの「志」から新しく調律師の学校が来年4月にスタートするという。 さっそく開校の意義、調律師の世界の奥深さを取材した。 |
調律師へのイメージ
調律師というと、みなさんはどんなイメージを持っているだろうか。小さい頃、アップライトのピアノを調律してくれた方は物静かな職人だったことを覚えている。現在でも、コンサートホールで開演ぎりぎりまで調律する姿には共通する寡黙さがある。1音1音を整えていく作業は、ものすごい集中力の賜物なんだろうと思う。
調律師の卵たちの現状
ところが専門学校を卒業した調律師の卵たちが、現場、すなわち家庭のピアノをすぐに調律できるかというと難しいのだという。西部ピアノのゼネラルマネージャー坂井賢太郎氏によると「調律師の専門学校の卒業生というのは、例えて言うなら玄関の手前、門扉に手をかけただけ。門にいろいろあることを理解しただけで、実際にはノブに手をかけていない状態なんです。だから故障の修理ができないし、Aの具合が悪かったらBを触れという知識があっても、その間のプロセスを知らないことが多く、現場で立ち往生することも。これは、玄関のベルが鳴らないからスイッチだけを見ているようなもので、コードが切れているかもしれないという発想がありません」と手厳しい。坂井氏の指摘はさらに続く。「専門学校の授業がトータルしてみてもせいぜい5~6台のピアノしか触らないということと、毎日調律しているピアノ相手だと、ミュージックワイヤが一番ベストな部分ですでにへこんでしまっていて、多少調整がずれていてもその部分がブリッジにはまってしまい、大切な微調整の感覚が養われません。これではさまざまな状態のピアノがある現場で及第点をとることができないのです」。
事実、西部ピアノに応募してくる調律師の卵たちで、すぐにでも現場に出られるのは5年で1人いるかいないか。一般的には現場に出られるまで早い人で6ヵ月、遅い人で2年を要するのが現状だ。一方で専門学校時代に年間授業料150~200万円も支払っている親の立場からすると、これで安心と思っていたのにまだ半人前と言われるのは悲しいこと。
調律師の卵たちは、卒業後一般の楽器店に所属し、現場の調律で初めて困惑する。習っていないこと、経験していないことが現場にはあまりにも多いからだ。その結果、本当はニカワを使う箇所に瞬間接着剤で簡単に永久接着してしまい、後の修理が困難な状態になったりする。「アップライトの前面のパネルを取って調律しようとしたらお客様から叱られたことがありました。もう何年もこれまでの人はそんなことをしなかったからだというのです。技術者の常識としては考えられないことが家庭のピアノで起きているのです」。
そこで、西部ピアノでは現場に対応した応用力の高い調律師を自前で養成する学校を作ることで、現状に風穴をあけることにした。カリキュラムをこなすことに熱心なこれまでの学校と違い、一人ひとりの能力に合わせた自在なプログラムで問題解決能力を高める。音のうなりがわからない生徒もいれば、直感的にわかる生徒でもユニゾンの深さ、広さではつまづくこともある。それぞれのレベルでつまづいたところを徹底的に教えることをこの学校は大切にする。
イタリアの名門工房との技術交流を軸にスタート
学校の名前は「レイチェ・ピアノフォルテ・アカデミー」。レイチェとはイタリアの地名。日本人選手が活躍するセリエAに加盟するプロサッカーチームもあり、長靴になぞらえたイタリアの地形ではかかとの部分に当たる。ローマから飛行機で1時間30分くらいの美しい街だ。
講師には、スタインウェイのコンサートチューナーとして30年以上現役バリバリの調律師、浜松で永年にわたってピアノを作ってきた職人、塗装のスペシャリスト、実務エキスパートなどがずらり。生徒の必要に応じて、豊富な人脈から専門家を招聘することもできるという。
ユニークなのは、あくまでも学校としての商業ベースでは考えていないことだろう。本気でやれば2年間でここまでできることを示したいという「志」が、ピアノの世界を豊かにしてくれそうで、なんとも心憎い。さらに思わず膝を叩きたくなるような特典もある。このレイチェにあるピアノ工房と西部ピアノは技術の交流をしてきた関係で、社員も研修によく訪れている。アカデミーの成績優秀者も卒業後、この工房に半年から1年留学することができる。
「1週間から3週間という短期留学はよくありますが、それではあっという間で本当に得たい技術が身につきません。半年以上ともに生活して得られる体験に勝るものはありません」と坂井氏。『磨き抜かれた匠の音』をこうして培っていくわけだ。大いに期待したい。
その「レイチェ・ピアノフォルテ・アカデミー」は2003年4月のスタート。募集要項・各種お問い合わせなどは、左のフリーダイヤルもしくはハガキで受け付けている。
●西部ピアノ学生課(担当・田中)
フリーダイヤル 0120-752-777
東京工房 〒130-0024 東京都墨田区菊川1-9-13



















ピアノの世界を身近に楽しむためのあれこれをご紹介する新企画の第1回目。
